美味しくなるスパイスは……

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「おい愛香《あいか》、こんな靴下持ってたか?ほら床に脱ぎ捨てられてるヤツ」

 ソファにだらしなく座る男に、私はビールとナッツを渡しつつ「アナタが間違って買ってきたんでしょ?」そう言葉を添える。

「少し待った方が美味しいんだよ」
「冷えたビールを待つぅ?アホか」

 舌打ち混じりに呑むが、「にっが〜」なんてコップを床に投げ捨てる。

「だから待てって言ったのに」
「ッチ……顔のアザ消えたんだな」
「化粧よ、別人に見えるでしょ?」
「確かに、今日のお前は辛気臭くなくて良い」
「そろそろ飲み頃かしら?」
「は?」

 その時だった、フライパンの軽い音が男の意識を飛ばしてソファから落とさせて、後頭部から飛び散る血が、私の持っているビールの中に滲んでいった。

「ナイスサーブ!ほら愛香美味しいよ」
「ありがとう姉さん」

 「ほんと美味しい」と静かに笑った。

「クズ男からの解放に乾杯」
ミステリー・推理
公開:23/10/18 23:16

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