おすそわけ

仙人試験を受ける。そう両親に伝えると驚かれた。
当然だ。私はまだ十代。仙人を目指そうなんて百年早い。
仙人になるかどうかは別として、試験くらい受けてもいいじゃないか。
どうにか説得して「学校の成績を落とさないのなら…」という条件の下、受験を許してもらえた。
仙人試験は実技と筆記の両方を必要とする。実は私、実技の方にちょっと自信がある。
今日もバイト先の老人ホームに行くと「おすそ分けさせてね」とお爺ちゃんお婆ちゃんの目から霞を貰う。
仙人実技の一つ。”霞を食らう”を私は人の目から行える。お爺ちゃんお婆ちゃんのかすみ目を治して回っている。世界広しと言えども、こんな事ができるのは私だけだろう。
これを仙人技能治療の一つとして認めてもらう為、私は仙人試験を受けるのだ。
決して、お金儲けに目が眩んだわけではない。だって私の目の前に現れた欲のかすみは、この老人ホームに住む仙人におすそ分けしたのだから。