血ビール

　そのビールは赤かった。まるで血のような赤だったので、血ビールとして売り出された。血ビールは瞬く間に大ヒット商品になった。アイドルがSNSで飲んでいる写真をあげたことも人気に拍車をかけた。ライブ前にこれを飲むと元気が沸いてくる。血ビールはエナジードリンクのような飲み方をされた。大事な仕事の前に血ビールを飲むビジネスマンもいたし、受験勉強の合間に隠れて血ビールを飲む受験生も現われた。血ビールは社会現象のようになった。血ビールの原料は何なのか、多くの憶測が囁かれたが、真相は企業秘密とのことで明らかにされなかった。そのせいで、ネット上では血ビールの原料について大喜利祭りが繰り広げられた。しかし、そんな血ビールブームも突然の終焉を迎えることになる。血ビールを造っていたブラッドブルワリーの社長が亡くなったのだ。死因は失血死。亡くなったとき社長の全身は真っ白で、身体中の血が抜かれたようだったという。