おすそわけ

今日の昼にはウチに到着するはずの祖母が夜になっても来ない。
どうしよう？携帯も繋がらないし警察に電話した方が…と悩んでいる中、祖母が到着した。
「ごめんなさい。電車の中でつい寝てしまって、気が付いたら知らない駅にいたの」
知らない駅？
「ええ、しろごなみ駅って言う駅。白い波だなんて、綺麗な名前よね」
その名前を聞いて全身に鳥肌が立った。しろごなみ、逆から読めば、みなごろし。それは都市伝説で囁かれる駅の名だ。
「親切な人がね、起こしてくれたの」
それは本当に人だったか？
「でもその人、真っ白な顔でね」
多分、人じゃなかったな。
「だから、おミカンをおすそ分けしてあげたの。ビタミンは元気の味よ、ってね。そしたら近くの駅まで連れてきてくれたのよ。本当にありがたいわ。だからお礼におミカン全部あげて来ちゃった」
ふふっ…と笑う祖母。
私はしろごなみ駅の情報に「みかんの香りがする」と書き込んでおいた。