0
          
          
             3
          
                                「以上をもちまして、お別れの儀は終了でございます。ご参列の皆様は、控室にてお待ちください。」
俺はひとりロビーに向かう。待っている間“俺の祭壇”から1本くすねておいたクラフトビールを楽しむつもりだった。生前、俺はクラフトビールを好んで飲んだ。一口飲むごとに感じる作り手の拘りが、作り手の生き様を垣間見るようで味わい深いからだ。しかし、病が発覚してからは、一滴も飲むことができなかった。どうしても最後に1杯飲みたかった。
ソファーに座り、缶を開ける。1口飲むと、草原のように爽やかな香りが鼻から抜ける。苦みを味わうごとに、辛かった記憶も幸せだった記憶も泡と一緒に消えていく気がした。
「旅立てそうだ。」
そう小さく呟いた時、突然「~家様、火葬炉までお越しください。」と、アナウンスが流れた。俺は残りをゆっくりと飲み干し、旅立つため力強く歩き出した。
窓から見えた空は、青く輝いていた。
    俺はひとりロビーに向かう。待っている間“俺の祭壇”から1本くすねておいたクラフトビールを楽しむつもりだった。生前、俺はクラフトビールを好んで飲んだ。一口飲むごとに感じる作り手の拘りが、作り手の生き様を垣間見るようで味わい深いからだ。しかし、病が発覚してからは、一滴も飲むことができなかった。どうしても最後に1杯飲みたかった。
ソファーに座り、缶を開ける。1口飲むと、草原のように爽やかな香りが鼻から抜ける。苦みを味わうごとに、辛かった記憶も幸せだった記憶も泡と一緒に消えていく気がした。
「旅立てそうだ。」
そう小さく呟いた時、突然「~家様、火葬炉までお越しください。」と、アナウンスが流れた。俺は残りをゆっくりと飲み干し、旅立つため力強く歩き出した。
窓から見えた空は、青く輝いていた。
        ファンタジー
      
      公開:23/10/16 21:05
更新:23/11/03 19:56
    更新:23/11/03 19:56
                  #クラフトビール 
              
    朗読家•演出家•劇作家。朗読で舞台芸術に取り組む。対面とオンラインにて、朗読と伝え方講座(プレゼン指導・話し方ボイストレーニング・コミュニケーションなど)を行う。
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます
                           梅屋サム
                梅屋サム