Drink the City

眠らない瓶の街、渋谷ビール群に建設されたシン・ランドマークは、旧世界の遺物的なスチール缶だった。

ダイバードリンクシティの象徴だそうな、ヴィンテージ感漂うプルタブの錆やリサイクル表示の無骨な円環、くすんだ銀の筒形は、褐色と緑が連なるボトルジャングルでひときわ異彩を放った。
鉄と謎に包まれた内部は、クラフト全盛の大醸造時代に造られた、ブルワリーメイドの熟成ビールと聞く。ＬＥＤきらめくディスプレイからアクリル越しに望む渋谷は、直売所の陳列ケースや有人コンビニの商品棚を渡り歩いたスチール缶の目にどう映るのか。横一線に並んだ瓶ビール達のかすかに透かし見える波紋を他所に、わずかに膨らんだスコアは炭酸の発泡音さえ漏らす事はなかった。

頭栓一つ抜け出たスカイビールツリーをすり抜け、胴とニッケルのコインが昇る。
自販機の不夜城に購買音が響き、プルタブを脱ぎ捨てたスチール缶から気の抜けた貴腐麦が香った。