地球に乾杯!

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宇宙で乾杯。これが夢だった。
国際宇宙ステーションの中で、歴史的にも宇宙で公式に認められた初めての飲酒。このままいけば宇宙で初めて公に酒を口にした人類となる。

手元の袋から一本のクラフトビールを取り出す。用意された特殊なスチール製の容器に缶の口を差し込む。蓋が開き、飲み口に通じる管とつながる。

ツアー主催者の音頭に応じて、みな思い思いに持ち込んだ缶を手にする。
容器の口から吸うようにビールを口に含む。苦味が口全体に広がり、同時に炭酸が口内を刺激する。

そこへ突然、横の方からワーッという叫び声が。目の前をたくさんの白い泡が飛び交う。どうやら誰かが専用の容器を使わずいきなり缶の蓋を開けたようだった。本人はもったいないとばかりに、浮遊する泡めがけて口を持っていく。まるで餌を求める魚のように見えたので、その滑稽さにみなが大爆笑。

僕は窓から見える地球に向かって缶を向けた。
「地球に乾杯!」
SF
公開:23/10/16 14:39
更新:23/10/19 19:56

門歩 鸞( 京都府 )


●略歴
・ブックショートアワード優秀賞
・怪異物語創作コンテスト「掛川百鬼紀行」奨励賞
・「文芸思潮」銀華文学賞優秀賞
・明石市文芸祭市長賞
・桜川の四季ショートストーリーコンテスト優秀賞
・西の正倉院みさと文学賞佳作
・半空文学賞
・フルオブブックス文学賞優秀賞
・岐阜県文芸祭文芸大賞
・下野新聞「新春しもつけ文芸」入賞
・八ヶ岳高原文学賞佳作・韮崎市長賞
・SOSEKIチャレンジングアワード準グランプリ
・労働者文学賞佳作
・木山捷平文学選奨最終候補
・埼玉文学賞最終候補
・短編恋愛小説「深大寺恋物語」最終候補
・かつしか文学賞最終候補
・京都キタ短編文学賞最終候補 他
●著書
 『ロシア皇帝に初めて謁見した日本人~伝兵衛物語』
 

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