金魚のぷくぷく。

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『ウチの店の料理に合う、微炭酸のクラフトビール、そちらで作っていただけませんか?』
 そんなダメ元の依頼に快諾を貰った僕は意気揚々とクラフトビール工場へと赴いた。
 そこで待っていたのはビヤ樽ならぬ円柱型の水槽群で、中には様々な魚が悠々と泳いでいた。
 呆気にとられる僕の前に工場長は試飲用のビールを持ってきた。
「こちらは最も強い、鮫のビールです」
 なるほど。泡も強いがクセも強い。飲むと何だか勇ましい気持ちになる。
「お次は泡の弾け方が特徴的な、イルカのビールです」
 確かに身体が自然と弾けるようだ。今ならバク転も出来る気がする。
「続きましては回遊魚の王、マグロの……」
 ち、ちょっと待って下さい!
 僕の求めているビールはもう少し庶民的で身近な感じの……。
「では、こちらで作りましょうかねぇ」

 そう言って工場長が持って来たのは受付にあった金魚鉢で、金魚がぷくぷくと泡を出していた。
ファンタジー
公開:23/10/18 15:21
更新:23/10/26 00:20

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki



 

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