迷路読書

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「この本をお願いします」と図書館の受付に言った。検索画面で偶然みた「題名のない本」。タイトルに惹かれて頼んだ。受付は困惑した顔で「こちらへ」と案内してくれる。地下二階のドアを開けて「このまま進んでください」と言われるままにひっそりとした廊下をゆくと突き当たりに木製の扉。これが表紙らしいがノブがなく押しても開かない。右下の階段を降りて、梯子を登ると部屋に出た。梯子には「脚注」とある。なるほど。部屋は白い壁ばかりで何も書いてない。壁の隅に数字がある。ノンブルか。そこを押すと次の部屋に出る。また数字だけ。ノンブルをどんどん押し進むと犬が寝そべっている。耳がやたらと大きい。ドッグイヤーか。そのときぱらりと落ちた薄い板から身を避ける。栞か。それにしても何もない頁。天井から垂れる紐に気がついた。栞紐、スピンともいう。スピンをつかんで上へ上へとよじ登るとようやく本から抜け出た。図書館の屋上だった。
その他
公開:23/10/18 09:13

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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