ビール雲

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 ビールをグラスに注ぐと、泡からふわっと黄金色の雲が立った。
「おっ、ビール雲だ」
「ビール雲?」
 手の平サイズのビール雲は、僕と妻の頭の上でぷかぷか漂っている。
「おいしいビールの証と云われているね。どれ……。うん、美味い」
 ちょっと奮発した甲斐があったというものだ。取り寄せたクラフトビールはいつも飲んでいるものとは一味違った。
「こんなの初めて見た」
「古くは神話にも登場しているんだ。有名どころだと、かの斉天大聖・孫悟空はこれに乗って空を駆け巡ったとか」
「すご」
「しかも飲めるらしい。ちゃんとビールなんだって」
「えっ、孫悟空、飲酒運転じゃん」
「昔と今じゃルールが違うでしょ。でも孫悟空はいくら飲んでも酔わなかったらしいね」
「へぇ。孫悟空ってザルなんだぁ」
 西遊記の旅路に想いを馳せながら飲むビールは、何だかシルクロードの味がした。
ファンタジー
公開:23/10/18 01:28
更新:23/10/18 23:10
現代 ファンタジー 歴史 クラフトビールコンテスト

きしよしき( 日本 )

短いお話なら書けるのでは? という安直な考えからショートショートに飛びついてみれば、その奥深さや可能性に打ちのめされている最中です。
読後に何らかの余韻を残してもらえるようなショートショートを目指しています。
田丸雅智先生のオンライン講座第20期に参加させていただきました。

※プロフィールや投稿作品に使用している画像はフリー素材サイト様からお借りしています。

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