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おっと、気づきなさったね。気づいちゃもらえねえかもしれねえって、諦めかけてたとこでさ、実際。で、何だい? たぁご挨拶だね。ビールの泡がそこいらの炭酸飲料よか長持ちするったってね、こう放っておかれちゃ、そりゃ殺生ってもんですよ。ビールは泡立ってナンボなんすから。え? そんなら泡が消えねえビールを醸造してみろって? 無粋だなぁ。気の置けない仲間との気安い会話の席に、そんな気の抜けねえモンなんて、洒落にもなりませんや。それに「気」ってのはつまりは「命」なんで。尽きてこそ浮かぶ瀬もありなんとやらってね、へへ。儚い? でもね、消えるからこそ有難てえってことだってあるんじゃねぇかな。それにね、このビールの泡ってのは、案外ビターなもんで。それがビールの味わいを深め、護ってるんだ。気楽なもんじゃねぇんで。だからさ、ビール飲むならきっちり泡越しを楽しんでもらいてぇんだな。さ、消えねえうちにいっとくれ。乾杯。
ファンタジー
公開:23/10/17 20:53
更新:23/10/26 20:38
更新:23/10/26 20:38
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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