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男はいつも震えていた。
恐怖が胸を支配し、手と足がすくんでどうにも落ち着いていられない。呼吸は荒くなり、目眩がする。呼吸はやがて過呼吸になって酸素が体中に行き渡らなくなる。手足が少し痺れて身体の自由が奪われる感覚に襲われる。

不快だ。でも、どうしようもない。止める術が見当たらないのだ。
傍から見れば不思議なのだろう。簡単に「落ち着け」と言ってくる。たかだか誰でもするような仕事の失敗を指摘されただけだ。当然、少しすれば落ち着けるものだと思っているのだろう。

落ち着けと、言われる度に思う。
簡単に止められるなら止めている!と。

男は震えを抱えながら、会社を出て家に帰った。

寝床につき、布団を被って考える。
自分はなぜ弱いのだろう。周りの人も悪気があって落ち着けと言っているわけではないのに怒りを感じてしまうのはなぜだろう。
答えのでない疑問を考えながら、いつの間にか眠りに入った。
ホラー
公開:23/10/17 15:42

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