ビアレディ

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ビアレディを目当てに、そのバーに来た。美女がカウンターの隅で飲んでいた。ビアレディだ。俺は席に着くとマスターに頼んだ。
「あの娘に麦汁を」
「かしこまりました」
マスターは麦汁をジョッキに注ぎ彼女に差し出した。
「あちらのお客様からです」
ビアレディは俺に微笑み会釈すると麦汁をゴクゴク飲み始めた。
彼女は『酵母』と書いた袋入りのスナック菓子をおつまみに麦汁を飲み干すと、そのままカウンターに突っ伏して眠った。
「うまく熟成すればいいな」
「楽しみですね」
「しかし、彼女がブルワリーなんて最初は驚いたよ」なんて、マスターと話していると、しばらくして彼女が目を覚ました。瞳が青く発光すると、ビアレディは俺の隣に座った。柑橘香の香りがした。
「お待たせ」そう言い空のジョッキに長いネイルの指先からビールを注ぐ。できたてのクラフトビールだ。
「うまい! 君も飲みなよ」
「ロボット酔わせてどうするのヨ」
SF
公開:23/10/17 02:16
ビール

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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