4
3

厨房から午後3時を刻む音がする。規則正しくトトトン…とみじん切りにする音が。
ここは時を刻む食堂。刻んだ時間で、いつかの日常を味わえる定食が評判だ。メニューは強気の日替わり定食一択。今日は午後3時を刻んだ定食らしい。
時間には、人によって様々な味がある。私なら、午前7時は朝食のトーストの上でジワリと溶けるバターの味。午後3時はおやつによく食べたクッキーの味。午後6時は台所から匂ってくると夕飯が楽しみで仕方がなくなった母の手作りカレーの味。

長針と短針が3時を示す時計版のような食材を、おじちゃんがまな板に並べて手際よく刻んでいく姿はどこか懐かしい。

「お待たせ~!午後3時定食だよっ!」

割烹着のおばちゃんが目の前に定食を置く。甘い私の3時は、魚の煮付けと卵焼きの味付けとして刻まれたようで、一口食べると、小学校にあがって初めてできたお友達と一緒にクッキーを食べた日の、午後3時の味がした。
その他
公開:23/10/16 23:05

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容