味噌汁

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 朝の食卓。よぼよぼの爺さんの味噌汁の中で、何かが溺れている。「たす……ごぼごぼ……けて……ごぼぼぼ」しかし爺さんにその声は届かない。補聴器を部屋に忘れてきてしまったのだ。その姿も目に入らない。ゆうべ、老眼鏡を踏んづけて壊してしまったのだ。よく気がつく婆さんはもういない。息子や孫たちはめったに会いに来ない。そういうわけで、爺さんは何かが溺れていることには気づかず、味噌汁を飲み干してしまう。今夜爺さんは、突拍子もない夢を見て、目が覚めるだろう。
ホラー
公開:23/10/13 18:59

六井象

超短編小説を中心とした、短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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