均等の波

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青年は眼鏡を押し上げると皆を見据えた。
「犯人が分かった。精巧な嘘もこの真実の眼鏡を素通りできな…」
「ちょっと待て」男が遮る。「その前にこの屋敷の秘密を紐解く必要がある。今、真実が私に語りかけて…」
「私気づいてしまったの」婦人が透き通る声で叫んだ。「そもそも最初から被害者なんて居なかったのよ。時に推理はバラの香りのよ…」
ボーン、と柱時計が鳴り響くと、一瞬の静寂が部屋を包む。
「さて、皆さん肝心な事をお忘れのようじゃ」老人が静かに語りだした。「わしが少年工だった頃…」
ガチャリとドアが開くと、犬を抱えた通行人が入ってきた。
「全く事件のことは知らないんだが、俺の推理はこうだ…」飼い主同様、犬も吠えている。
近年、差別をなくす運動は世界中で巻き起こっている。この物語の世界もしかり。主役、脇役の差をなくそうと、この物語には主役は存在しない。

さて、それでは私の推理を聞いていただこうか。
SF
公開:23/10/13 10:23
更新:23/10/13 11:54

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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