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 夜、寝ようとした時、いつも使っている鏡の鏡面が何だかぶよぶよしていることに気づいた。試しに指を突っ込んでみたら鏡の向こう側に突き抜けたので、今度は顔を突っ込んでみた。鏡の向こうの世界は薄暗くて、理科室のにおいがした。よく見ると、反転した部屋の隅っこで、明日の朝鏡に映るであろうぼくが、培養液を満たしたでっかい試験管の中でゆらゆら揺らめいていた。次の朝は、昨夜見た培養液の中のぼくに合わせて、わざと少し髭を剃り残した。
SF
公開:23/10/12 18:26

六井象

超短編小説を中心とした、短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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