飲み切り作家

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新人賞を取った出版社から、字ビール缶の詰め合わせをもらった。
小説が飲める創作ビールだそうだ。本の装丁風のラベルにはタイトルと作者名、内容量に応じた原稿枚数が記してある。
裏面の賞味期限が切れているのはいただけないが、缶飲料なら許容範囲か。手始めに135枚の短編缶を開ける。

喉に落ちる筆致の、粗削りながらテンポとキレの良い味わい。確か数年前の新人賞受賞作だ。うっすら覚えのある結末を飲み干し次の缶へ。グラスに1章ずつ注ぎながら、350枚の中編缶、500枚の長編缶と飲み進める。
どの作家も作品も、文壇から消えた過去の話題作や人気作家だ。私はこんな風に飲まれるものか。危機感と決意を新たに苦みを増した文章を流し込む。

1本だけ期限の残った空白のラベル。その意味に気付いたのは開封後だった。
缶詰めにされた字ビールの監獄で、机上に積まれた白紙の原稿と、締め切りのカウントダウンが私を待ち構えていた。
ホラー
公開:23/10/12 09:39
クラフトビールコンテスト

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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