誕生日にはルーレットダーツチャンス

去年の俺の誕生日。彼女は部屋にルーレットダーツを設置すると俺に矢を１本だけ渡してきた。
的を見る。欲しいものの名前が並ぶ。さすが俺の彼女。分かっているじゃない。
中でも一番目を惹くのは”わ・た・し”の、横にある”た・わ・し”の文字。的の多くを占めている。
たわしには当たるなと矢を投げる。
「はい。これで自分を磨きなさい」
彼女から誕生日プレゼントのたわしを貰った。

今年も俺の誕生日にルーレットダーツを設置する彼女。この１年、俺は自分とダーツの腕を磨いてきた。今年は絶対に外さない！
…が、今年の俺の矢は的にさえ当たらなかった。
力み過ぎた。緊張しすぎた。最悪だ…
彼女がペンを差し出す。
「大ハズレした場所にアンタの名前書いて」
ペンを手に、壁に刺さった矢に目を向ける。
婚姻届け。夫の名前を書く欄に矢が刺さっていた。
「アンタの悪癖なんてお見通しだっつーの」
さすが俺の…妻。分かっているな。