手放さない

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私は一度手に入れたものを絶対に手放さない性格だ。
断捨離? おすそ分け? とんでもない!
そのためか、部屋の中は物で溢れ返って足の踏み場もない。でも、この中にいると、不思議と落ち着く。
ある日、妙なお客が来た。
「こんにちは。貧乏神です」
貧乏神は私の部屋の中を見て、一瞬「ゲッ!」という顔をしたが、そのまますたすたと中に入った。
「僕を誰かになすりつけない限り、ずっと居座りますよ?」
私は「あっそう」と言って、いつもと変わらずに過ごす。しかし、貧乏神のせいで、私は自分のものを捨てたり、人にあげたりして、ついに部屋の中はすっからかんになった。
「あー、何もないって最高!」
横になって眠るなんて、いつ以来だろうか。
「あの……あなたはこれ以上、貧乏になりようがないので、僕はそろそろ……」
私は出て行こうとする貧乏神の肩をガシッと掴んだ。
「絶対に……手放さない」
その他
公開:23/10/14 23:21

トガシテツヤ( 北海道 )

(以前のアカウントが操作不能になってしまったので再掲です)
茨城県つくば市出身、北海道オホーツク在住。
小説、エッセイ、朗読用台本の執筆、ショートドラマのシナリオライター、Webライターなど。
主にnoteで小説やショートショートを執筆しています。

note → https://note.com/t_design04

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