はなきん
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男が仕事を終えたとき、時計の針は深夜11時を回っていた。帰宅前に一服しようと、男は屋上に上がった。
フェンスに背中を預け、あと一歩で満月になる月に煙を吐くと、隣のビルの屋上で女が一人、花壇のそばに座っているのが見えた。
「ああ。花金を育ててるのか」
花壇は花金の黒い花弁が満開だった。花金とは都会の喧騒で育つ金曜の夜。月光の下、彼らは静かに揺れていた。
女が花金を摘み、ジョッキに入れると、花弁はシュワシュワと溶けて黒ビールとなった。男はゴクリと喉を鳴らした。
女がジョッキに口をつけると、ごくごくと喉を通る音が、男まで届いた。
ジョッキを傾ける程、頭上の月や星たちが早送りのように地表に落ちていく。女がお構いなく飲み干していくと、夜はあけ、東の空が白み始めた。
ジョッキを下すと、女はようやく男の視線に気がついた。赤くなった女が驚いてゴホンと咳き込むと、西の空から月が一瞬飛び出した。
フェンスに背中を預け、あと一歩で満月になる月に煙を吐くと、隣のビルの屋上で女が一人、花壇のそばに座っているのが見えた。
「ああ。花金を育ててるのか」
花壇は花金の黒い花弁が満開だった。花金とは都会の喧騒で育つ金曜の夜。月光の下、彼らは静かに揺れていた。
女が花金を摘み、ジョッキに入れると、花弁はシュワシュワと溶けて黒ビールとなった。男はゴクリと喉を鳴らした。
女がジョッキに口をつけると、ごくごくと喉を通る音が、男まで届いた。
ジョッキを傾ける程、頭上の月や星たちが早送りのように地表に落ちていく。女がお構いなく飲み干していくと、夜はあけ、東の空が白み始めた。
ジョッキを下すと、女はようやく男の視線に気がついた。赤くなった女が驚いてゴホンと咳き込むと、西の空から月が一瞬飛び出した。
ファンタジー
公開:23/10/13 23:55
更新:23/11/14 22:01
更新:23/11/14 22:01
クラフトビール
マイペースに書いてきます。
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100 サクラ
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