2
2
発端は、スマホを拾ったことだった。落とし主につながる情報はないかと手に取ると、当然の如くロック画面が現れた。指紋認証。そこに何気なく自分の指をあててみた。すると、あっけなくロックが解除されてしまった。わたしは怖くなり、早々に画面を閉じて交番に届けた。
帰り道、わたしは小さな公園に立ちよった。ベンチに座ってじっと手を見る。とりたてて特徴的とも思えない我が指の我が指紋の一本一本をじっくりとたどってみる。人はそれぞれが、このように複雑な迷路を備えていて、その迷路が触れ合うことから交流が始まるのだな、などと思う。すっかり秋めいてきた風が砂場に落ちていた枯れ葉を巻き込んで靴の先を通り過ぎていく。
指紋は一人ひとり違う。だからそれを鍵として用いることが広まっている。だがそれらの一つ一つ違う鍵の全てに合うマスターキーというものがある。
ならばきっと……
わたしは本気で、闇サイトの勉強を始めた。
帰り道、わたしは小さな公園に立ちよった。ベンチに座ってじっと手を見る。とりたてて特徴的とも思えない我が指の我が指紋の一本一本をじっくりとたどってみる。人はそれぞれが、このように複雑な迷路を備えていて、その迷路が触れ合うことから交流が始まるのだな、などと思う。すっかり秋めいてきた風が砂場に落ちていた枯れ葉を巻き込んで靴の先を通り過ぎていく。
指紋は一人ひとり違う。だからそれを鍵として用いることが広まっている。だがそれらの一つ一つ違う鍵の全てに合うマスターキーというものがある。
ならばきっと……
わたしは本気で、闇サイトの勉強を始めた。
その他
公開:23/10/08 10:18
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます