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変わったビールを作るというクラフト工房があると聞いて、見学に行った。年季の入った倉では、ねじり鉢巻きの親方が懸命に黄色くて透明な物体を足でこねていた。
「入門希望かい?」
頷くと、親方は近づいて見るよう言った。
「その黄色いのは?」
「これはビールの塊よ。発酵したビールにゼラチンや小麦を混ぜてこねるんだ」
親方は、踏んだ塊を今度は太い棒で伸ばしていた。
「これをしっかりやるとコシが出るんだ。喉ごしがな」
ガハハ、と親方は笑った。今度は平たくなったビールに包丁を入れ、ビールは黄色いうどんのようになった。
「飲んでみろ」
親方は茹であがったビールの一本を僕に勧めた。チュルチュル、苦みと旨味が喉を伝わってきて、液体のビールとは違う味わいがあった。啜るといくらでも喉を通り、なかなか切れない。よく見ると、一本のビール麺が無限に伸びている。親方は自慢げに言った。
「これが『のビール』だ」
「入門希望かい?」
頷くと、親方は近づいて見るよう言った。
「その黄色いのは?」
「これはビールの塊よ。発酵したビールにゼラチンや小麦を混ぜてこねるんだ」
親方は、踏んだ塊を今度は太い棒で伸ばしていた。
「これをしっかりやるとコシが出るんだ。喉ごしがな」
ガハハ、と親方は笑った。今度は平たくなったビールに包丁を入れ、ビールは黄色いうどんのようになった。
「飲んでみろ」
親方は茹であがったビールの一本を僕に勧めた。チュルチュル、苦みと旨味が喉を伝わってきて、液体のビールとは違う味わいがあった。啜るといくらでも喉を通り、なかなか切れない。よく見ると、一本のビール麺が無限に伸びている。親方は自慢げに言った。
「これが『のビール』だ」
その他
公開:23/10/10 00:29
クラフトビール
ショートショート
コンテスト
はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します
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