祖父とビール

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 生まれた頃から一緒に暮らしていたじいちゃんは、共働きの両親に代わってよく遊んでくれた。
 でもそんなじいちゃんは、僕が高校生の時に死んでしまった。一緒に酒を飲む夢も果たせずに。
 五年経ち、僕も負けず劣らずビール好きになった。
 毎日仏壇に供えるビールは僕の好きな銘柄に変わったけれど、じいちゃんも許してくれているはずだ。
 そんなある日。珍しいビールを手に入れたので、後で飲もうと供えておいた。すると、夜手に取った時には空になっていたのだ。
 楽しみにしていたのに。高かったのに。母か、父か。
 でも、両親に聞いても違うと言う。じゃあもしかして? いや、まさか。
 缶をよくよく見てみると、なんと「三途の川の水使用」と書いてある。
 ああ、だからじいちゃんも。
 それ以来、お供えはそのビールに決まり。じいちゃんとの晩酌を楽しみに、今日も一日がんばろうと思う。
その他
公開:23/10/09 15:23

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

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