特別食堂

私は人生の中で一度も自分で食べるものを選んだことがない。
幼い頃から外食は全て親がメニューを決める。それが当たり前だと思っていた。
学食では友人がメニューを決めていた。友人が写真を撮り終わったそれをいつも食べていた。
不満はない。外食は沢山あるメニューの中から、美味しいものを見つけなければならない。
私はそれを全部人任せにしていた。不自由だが満足していた。
でも今日の私は違う！食べるものを自分で決める。流される人生は今日で終わりだ。
一人、食堂に足を踏み入れる。メニューを見て、好きなものを注文しようとするも自分が何が好きなのか思い出せない。
あたふたする私に店主は「好きなだけ悩んでいいよ」と笑いかける。
長考し、やっと選んだメニューはハズレだった。でもそれが嬉しい。新しい食の発見だ！
沢山の料理名が並ぶメニュー。それを見て、私はまたここに来ようと決めた。私の好きが見つかりそうな特別食堂へ。