モンブランビール

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紅葉を楽しんでいると、いつのまにか道に迷い山奥に入り込んでしまった。
もうすぐ日も暮れるし辺りも樹木でこんもりと薄暗く、途方にくれていると前に仄かな灯りが見えてきた。
こんな山奥に人家があるとは思えないが、近づくと店の様でもあった。
少しホットし扉を開け店に入ってみると、客席には誰も座っていないし、何度声を掛けても店主も出て来ない。
でもここで一息付きたいので、恐る恐る席に座るといつの間にかテーブルの上にはビールらしき飲み物が置かれていた。
思い切って飲んでみるとモンブランの様な味のする美味しいビールであった。
お気に召しましたかと、何処からとも無く太い吠える様な不気味な声が響いて聞こえて来た。
襲われそうな不安を感じ慌てて表に逃げ出し、がむしゃらに山を滑りながらも駆け下りた。
やっと人里に辿り着くと村人が栗の木を囲みながら、人襲い熊が幹を揺すり栗の実を全部落とし盗って言ったと嘆いていた。
ミステリー・推理
公開:23/10/04 15:08

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