黄金の中をのぼっていくのは…

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「あっ、待って!」

恋人と初めて二人きりで過ごす大晦日。彼の買ってきた缶ビールを開け、そのまま飲もうとしたら止められた。

「いい?見てて?」

私の手から優しく缶を奪うと、彼はグラスにビールを注ぐ。黄金色に満たされていくグラスの中をのぼっていくのは泡…ではなく、小さな鯉の群れだった。驚く私に、彼が微笑んで話し始める。

「登竜門って聞いたことあるでしょ?この鯉達も、上まで登りきれたら竜になれるかもしれないんだ。成功率は低いみたいだけど…来年は辰年だし、見られたらきっといい一年になるよね。」

たしかに、ビールの上を覆う白雲の様な泡へ到達する前に消えていく鯉が多い。私達は口もつけずに、鯉達の奮闘を見守っていた。
しばらくすると、1匹の鯉が最後の力を振り絞って跳ねあがり、泡の白雲へと飛び込んだ!
一瞬の静寂が部屋を支配した後、勇ましい咆哮とともにビール色の立派な竜がグラスの中から飛翔した!
その他
公開:23/10/04 14:05

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます!
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

日常に寄り添い、読んだ人がほんのすこ~しだけ前向きになれるような物語を書けたらいいなぁと思っています。

現在、少々多忙につき投稿のみのログインになる可能性が高いです。よろしくお願いいたします!

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