2
2

 ようやく秋めいてきたある日、夜風を入れようと車の窓を開けたら、空が入ってきた。
 驚いている間にも天井は高く突き抜け、たくさんの星が頭上に輝き始める。
 憧れのオープンカーみたいだ。気持ちいいなぁ。
 仕事の疲れもストレスも、すぐに吹き飛んでいった。
 家に帰ると、ワンルームの狭い部屋は、いつもに増して味気なく感じられた。
 まさかとは思いながらも、窓を開けてみる。
 すると、やっぱり空は入って来た。
 今度はもっとゆっくり味わえる。僕は月を愛でながら晩酌し、星に囲まれて眠った。
 朝になると、部屋は元に戻っていた。窓を開けても風しか入ってこない。
 今夜、また空は来てくれるのだろうか。来てくれるのなら、テントを買ってこないとな。
ファンタジー
公開:23/10/03 21:00
更新:23/10/04 00:14

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容