見る目

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「ビール造りなんてさ、やってみりゃぁ、地味なもんさ」
酒場のカウンター、私の隣の席で管を巻く彼は、大学の頃からの友人だ。大学時代にハマったクラフトビールがきっかけで、なんと今は小さな醸造所で働いている。
「力仕事は多いし、待ち時間は長いし、掃除やら機材の洗浄ばっかり」
「お前からしたら、地味かも知れないけど。クラフトビールは最近、ビアパブみたいな専門店だけじゃなく、コンビニやスーパーでだって見かけるようになったし。お前は見る目があるんだよ」
大学を卒業して、久しぶりに連絡を取り、飲もうという流れになった。たまたま彼の働く醸造所のビールが飲める店を見つけ、今日に至る。
「地味なもんさ…でも」
彼はビールを一口飲んで続ける。
「地味な仕事も、どれか一つでも気を抜いたら、こんなに美味くはならねぇんだよなぁ」
グラスに注がれた、自分の造ったビールを見つめる彼の目は、あの頃よりも輝いて見えた。
その他
公開:23/10/05 17:00
更新:23/10/04 11:56

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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