クフラとルビー

0
3

埠頭に広がる海は落ちてくる夕日を受け止めるところだ。
低い空はオレンジに染まり、雲を隔てて高い空はまだ昼の青を残している。
クフラは鞄から空のグラスを取り出すと、首を傾げるルビーの前に掲げた。
「よく見てて」
グラスを通して雲と夕焼け空が映っている。クフラが「よし!」と叫んだ次の瞬間。
「え、どういうこと」グラスの中に切り取られた雲と夕焼け空にルビーは目を丸くした。
「飲んでみて」と笑顔のクフラに、戸惑いつつルビーは口をつけた。
今度はその美味しさに目を丸くした。「これは何なの」
「名前はまだ無いんだ。君とこの景色をずっと見ていたいと思ったら出来たんだ。夕日は夜が近いから苦いんだ。でも朝日は昼が近いから甘いんだよ。君は朝日の方が好きかも」
ルビーは悪戯に微笑んだ。「ねぇ。それって…」
「この奇跡の飲み物には君の名前を貰えないかな。それと…」
夕焼け以上に染まるクフラは小さな箱を取り出した。
ファンタジー
公開:23/10/03 01:03
更新:23/11/13 00:17

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容