私の住む町、幽楽町

幽霊と人が暮らす町。それが私の住む町、幽楽町。
私の父は幽霊で、母は人間だ。私は母の血が濃いのか、ほぼ人間である。
父は生前ホストをしてて、母はそんな父に惚れこんでいたらしい。
母は父が死んでしまった時、後を追って三途の川にまで来たというのだから驚きだ。
死んではならないと諭す父に、母はそれなら私と結婚して！と指輪を差し出したようだ。
普通逆じゃない？と思わなくもないがこの強引さで父と母は結婚し、この幽楽町に住むようになった。
幽霊の父は幽楽町から出られないが、私と母は人間故にこの幽楽町から人間の住む世界へと出られる。
ちなみに幽楽町から出る際は、温泉の入浴が義務付けられている。
温泉に入ると不思議と生き返るのだ。この生き返りをしなければ、人間の住む世界に出た途端死んでしまう。
入浴をせずに、命を落とす人を私は何人も見てきた。
その人達は三途の川の渡り賃を稼ぐ為、今日もこの町で働いている。