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「さぁ、暗くなってきたし、そろそろ帰りましょう。」

夕暮れと彼岸花で一面が赤く染まる土手。夢中で遊ぶ娘に私は優しく呼びかけた。

「えー!まだ5時になってないのにぃ…。」

娘はプクっと頬を膨らます。スマホで時間を確認してみると、4時45分だった。いつも5時になったら帰ろうねと約束しているから、たしかにあと15分は遊べるのだが…娘は時計も見ずに、何故まだ5時になっていないと分かったのだろう。不思議そうにしている私の手をひいて、娘はアゲハ蝶のとまる彼岸花の前に立った。

「ほらね!アゲハ蝶さんは、まだ4時のところにとまってるよ~!この前一人で遊んでいた時にね、綺麗な女の人が教えてくれたの。これは彼岸花時計っていって、アゲハ蝶さんのとまっているところで時間がわかるんだよって♪」

よくこの土手で遊んでいる娘は、いつの間にか彼岸花に愛され、その精霊に会ったのかもしれない。
ファンタジー
公開:23/10/06 09:39

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます!
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。

日常に寄り添い、読んだ人がほんのすこ~しだけ前向きになれるような物語を書けたらいいなぁと思っている街灯の明かりをこよなく愛す人です。

最近1番幸せだなぁと感じるのはゆっくり眠っている時。その次がお散歩してる時かな?

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