さけのさかな

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無人島に流れ着いた男は、今日も助けを待ちつつ、波打ち際で釣りをしていた。

「なんだこりゃ」

釣れたのは、きらきらと黄金に輝く鮭だった。白い泡がしゅわしゅわと浮かんでいる。男が訝しんでいると、足元にビール瓶が転がっていた。中には手紙が入っていた。

『我々は山間の小さなビール工房です。広い海の向こうで暮らす皆様に、自慢のビールを楽しんで頂くため、【さけのさかな】を川から放流いたしました』

さかな? ビール?
匂いに釣られて鮭を丸齧りしてみると、口の中で炭酸が弾けた。そして、男は知らない誰かの人生を追体験した。

思い切って脱サラして作ったビール工房。知らない土地で苦労の連続。しかし村の皆が応援してくれ...

美味しい記憶に舌鼓しつつ、酔っ払った男は足元を崩し、海に転んだ。すると、男の体をシュワシュワと白い泡が包んだ。

金色のさけのさかなは、無人島の記憶を胸に故郷の川に帰っていった。
ファンタジー
公開:23/10/04 22:01
更新:23/10/05 08:34
クラフトビール

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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