覗鬼（のぞき）

ここ最近、誰かに覗き見られている感覚がしてならない。
それを友人に話すと自意識過剰だと言われた。その通りだ。
監視カメラを確認し、覗きの正体を確認しようとした。カメラには誰も映っていなかった。
病院でそんな症状を伝えると先生は「覗鬼（のぞき）ですね」と教えてくれた。
覗鬼とは疑心暗鬼の一種で、常に誰かに見られている感覚が続く症状。
SNSなんかで一般人が有名になる時代。珍しい症状ではないようだ。
先生は私に「どんな人に覗かれているのか？」と聞いてきた。私はうろ覚えながら、その容姿を答えていく。
モンタージュされた似顔絵を見て驚いた。そこに描かれていたのは私の顔だった。
どうやら私は他人から見られる自分を意識しすぎているらしい。それをやめると覗鬼も見えなくなるようだ。

その日の晩、夜中ふと目が覚めた私は声を失った。
私と同じ顔をした何者かが私に覆いかぶさり、私の顔を真上から覗き込んでいた。