ヘルメットの秘密

私のクラスにいつもヘルメットを被っている子がいる。
先生からは「病気だから」と伝えられただけで、実際のところ先生も何の病気か知らないようだ。
クラスメイトも「どういう病気？」なんて立ち入った事を聞けない。重い病気だったら受け止めきれない。
だから自然と壁ができてしまう。クラスメイトが気を使う。そこで私の出番だ。
「お前なら空気を読んで何の病気か聞き出せるんじゃないか？」と期待された。

放課後。二人きりの教室で私は聞いた。何の病気なのか？と。
相手はおもむろにヘルメットを脱いだ。カラスの濡れ羽色の黒髪が流れるようにはらりと落ちる。ドキッとした。
『私はサトラレ。このヘルメットには意思流出防止障壁が組み込まれている。これを被る事によって私の心は悟られない。これが理由だ。満足か？お節介バカ』
相手の考えが私の頭に流れ込んできて納得した。
どおりでさとりである私が、唯一考えを読めなかったわけだ。