大人の演じ方

子どもの頃はいつだってヒーローを演じていた。大人に悪を演じてもらってはそれを退治し、正義の味方になったつもりでいた。
だけど歳を重ねて行くにつれズルを憶え、正しくある事がバカらしく思えて来た。
正直者が馬鹿を見る。それなら嘘つきでいい。損をしない為に誰かが踏み固めた狡い人生道を歩き進む。
そうやって大人になり、結婚した今では子ども達の前で悪を演じる。
この役もだいぶ慣れて来た。会社では憎まれ役・敵役も演じているからな。嫌な大人になったものだと鼻で笑う。
勉強しないと玩具を買ってあげない！と、言っては子どもをコントロールする。本当に狡い大人だよ。
だけど、悪い大人を演じる事だけは絶対にしなかった。それをしてしまえば子ども達に顔向けできない。
子ども達の前では、時々でいいから正義の味方を演じていたい。
大人ってのは本当にズルい。
変身しなくても、行動一つで子どものヒーローを演じられるのだから。