回想列車

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「次は回送列車です。ご乗車にはなれません」
アナウンスが流れる。
地下鉄の駅構内に『回送』と表示された。
一瞬、よそ見をすると、再びアナウンスが流れた。
「次は回想列車です。ご乗車される方はお待ちください」
今度は駅構内に『回想』と表示された。
乗車できる?
列車が駅のプラットホームに到着し、なぜか乗り込んでしまった。
車内には私以外、誰も乗っていない。
列車は、いつもどおり動き始めたが、平坦な直線だったレールの先が急に螺旋状になっていた。
列車は、ぐるぐると回転するように上っていく。
車窓には、私の生まれたころから始まって今までの出来事が時系列に映し出された。まるで死の間際に見るといわれる走馬灯のようだ。
すると今度は、列車が急に直滑降で下りだした。猛スピードで怖くなった。
車窓には、脱線した車両が駅のプラットホームに突っ込んだ光景が映し出された。
そのまま私の意識は遠のいていったーー。
ホラー
公開:23/10/01 06:30
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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