猫面瘡

長年飼っていた猫が昨夜、息を引き取った。
猫は最後の力で俺の腕を引っかいた。仕返しのつもりか？心まで痛む。
翌日。猫を供養し、会社へ向かう。
途中、かゆみ止めを購入した。昨夜、猫に引っかかれた箇所が痒い。
会社に到着し、早速塗ろうと袖を捲る。そこには人面瘡ならぬ猫面瘡が出来ていた。亡くなった飼い猫の顔がそこにあった。
それを見た女性社員が悲鳴を上げた。
「可愛い猫ちゃんですね！触ってもいいですか？」
…予想と違った反応だ。猫面瘡も撫でられるとゴロゴロと喉を鳴らす。勝手に俺の喉を使うな。
猫面瘡は意外にも人気だった。人から話しかけられる事が増え、俺にも笑顔が増えた。
撫でると俺も猫も幸せを感じる。眠る猫面瘡を起こさぬよう俺も休む。無理な残業も減らした。その生活改善が健康診断に表れた。
どうやら猫は俺が心配で死んでも死にきれなかったようだ。
大丈夫。心配ない。だがもう、いなくなってくれるなよ。