茶火大会

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「では茶っ火(着火)します!」
「ヒュー……ドン!」
花火ならぬ茶火が夜空を緑色に染めた。仄かにお茶の香りもする。
ここは、お茶の産地で有名な某台地。毎年恒例の茶火大会が始まった。
菊、牡丹、そして冠ーー茶火師が火薬に茶葉を混ぜ、一つひとつ端正込めて作った茶火玉が打ち上げられる。
最近は、カーボンニュートラルや脱炭素などの言葉も流行って、グリーン一色に空を彩る茶火は大人気となっている。
「茶屋~」
観客の中から威勢のいい掛け声が聞こえてくる。「鍵屋~」や「玉屋~」でないところも茶火大会らしい。
枝垂れ柳、蜂、花雷、椰子、千輪に続いて、いよいよフィナーレのナイアガラと思いきや、茶火大会ならではの趣向が凝らされている。
ナイアガラは若草色で、その名も「茶柱が立つ」。幾本もの立った茶柱の茶火が並び、一斉に歓声が上がった。
そして「皆様に幸あれ!」と言うアナウンスとともに茶火大会は幕を閉じた。
その他
公開:23/09/09 07:02
着火 花火 夜空 緑色 茶屋 鍵屋 玉屋 茶柱が立つ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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