愛してる恐怖症

私は「愛してる」が怖い。その言葉が聞こえると咄嗟に耳を塞ぐ。
それが面白いらしくて、今でも皆にからかわれる。
皆が羨ましい。「愛してる」が見えていないんだから。私には「愛してる」がナメクジのような生き物に見える。「愛してる」と言うと口からナメクジが出てくる。
それは向けられた相手の耳へと向かい、体内に入ろうとしてくる。実に気持ち悪い。粘着性、なんて言われるわけだ。
想像してほしい。テレビを見ていて、カメラに向かって「愛してる」と微笑む俳優を。
私にはそれが口からナメクジを吐くおぞましいものに見えてくる。
カメラを埋め尽くすナメクジ。スピーカー越しに出てこない事が唯一の救い。愛してる恐怖症。困った体質だ。
体質と言えば、「ごめんなさい」と言うと皆は私から距離を取る。
皆が言うには私が「ごめんなさい」を言う度に口から蛇のような生き物が出てくるそうだ。
それが私には見えない。本当に困った体質だ。