焼き立ての背表紙

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近所の図書館に【焼き立て背表紙サックサク♪】というコーナーができていた。興味を惹かれ、私は近くの司書さんに声をかける。

「あの、焼き立て背表紙というのは…?」

「是非お試しください。美味しいですよ!」

司書さんから促されるままに、やけに日当たりのよい棚の前へ立つ。ちょっと珍しい棚の配置だ。

「本の背表紙って日に焼けてしまいますよね。その原理を応用しまして、背表紙焼きというお菓子が開発されたんです。この棚の本は背表紙焼き用でして、日当たりのいいところへ置くと美味しく焼きあがるんですよ。お好きな本にこちらのペンで好きな題名をどうぞ。」

渡されたペンで『蜜柑』と書いてしばらく待つ。背表紙は静かに焼け始める。良い焼き色になったところで、司書さんはヘラで手早く背表紙を削ぎ落し、白いお皿にのせて持ってきてくれた。
題名の影響だろうか?私の背表紙焼きは、齧ると口いっぱいに蜜柑の香りが広がった。
その他
公開:23/09/08 20:29
更新:25/08/12 15:36

ネモフィラ( 更新停止 )

読んだ人に笑顔になってもらいたいという想いから投稿し始めましたが、私の文章ではそういったものが届けられないのだろうなぁと気づかされました。

今は書こうと思うとただただ悲しくなるだけなので、もう投稿することはないかもしれません。
アカウントは残しますがこれ以降浮上することもないかと思います。

短い間でしたが今までありがとうございました!
たくさん学ばせて頂きました。
お元気で。

2025.9

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