焼き立ての背表紙

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近所の図書館に【焼き立て背表紙サックサク♪】というコーナーができていた。興味を惹かれ、私は近くの司書さんに声をかける。

「あの、焼き立て背表紙というのは…?」

「是非お試しください。美味しいですよ!」

司書さんから促されるままに、やけに日当たりのよい棚の前へ立つ。ちょっと珍しい棚の配置だ。

「本の背表紙って日に焼けてしまいますよね。その原理を応用しまして、背表紙焼きというお菓子が開発されたんです。この棚の本は背表紙焼き用でして、日当たりのいいところへ置くと美味しく焼きあがるんですよ。お好きな本にこちらのペンで好きな題名をどうぞ。」

渡されたペンで『蜜柑』と書いてしばらく待つ。背表紙は静かに焼け始める。良い焼き色になったところで、司書さんはヘラで手早く背表紙を削ぎ落し、白いお皿にのせて持ってきてくれた。
題名の影響だろうか?私の背表紙焼きは、齧ると口いっぱいに蜜柑の香りが広がった。
その他
公開:23/09/08 20:29

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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