気まぐれと誠実

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「好きって言ったくせに」
「嫌いじゃない、それだけの意味だ」
「それって好き、だろ?」
 そう言うと、あいつは満面の笑みを浮かべて、俺の手をとった。
 ──どうしてこうなった。俺は頭を抱え、昨日の自分を怨みつつ、ジェットコースターの階段をのぼった。一段一段のぼる足が重く感じる。そのくせ、俺をひっぱる手の持ち主は浮かれている。それが無性に悔しい。
「お前と乗るの、すっごい楽しみだったんだ」
 そんなことを言うな、嬉しくなってしまう。
 俺はあいつの隣に座り、ガードを下ろした。同時にヒュッ、と息を吸う。
 手がつながれていた。痛いほどに。
「この馬鹿力が」
 目が合う。そして滑車がはじまった。
その他
公開:23/09/07 09:42
幼なじみ

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