ここ掘れワンワン！

就職する前に自分探しの旅に出たいと母に申し出たところ、母が犬を連れて私の部屋にやって来た。
犬は私のニオイを嗅ぐと何かを探すように部屋をぐるり一周する。
そして私の机の引き出しを器用に開け、二重蓋の仕掛けを暴くと隠していた黒歴史ノートの存在を母に教えた。
それを手にし、中身を検める母。私が止める暇もなかった。
「アンタ、異世界では最強の暗黒竜騎士やってんのね。へぇ…凄いじゃない。恋人候補が１００人もいるのね。現実と大違い。大金持ちで羨ましいわ…で、どうする？アンタの言う”自分”って奴、見つけたんだけど？」
知られたくなかった過去の妄想が次々と掘り返される。
私の旅は母に弱みを握られる事で始まる前に終わった…
母よ…そんな特殊過ぎる犬を連れてくるなんてチートが過ぎませんか？