夜の音

毎晩１０時を過ぎる頃、私の肩から「パキッ！」と音が鳴る。
身体に異変はない。病院にも行ってみたが何の異常もない。
１日の疲れや凝りといったものが夜、音となって出ているのではないか？
私は自身の肩に聴診器を当ててみた。音の原因を突き止めてやろうと躍起になっていた。
ざっざっざっ…
何かが歩く音が腕から肩にかけて聞こえてくる。
気持ち悪い…音を止めようと足音のする箇所を思いっきり叩いた。
だっだっだっ！
足音が、走る音に変わった。肩からパキパキと音が鳴る。お構いなしに何か肩から首へと上がってくる。
聴診器を使わなくても聞こえる足音。何かが体の中から上ってきている。
その何かは、私の目玉を内側からぐいぐい通し始めた。瞼を固く閉じる。
これは夢だ。悪い夢だ。そう自分に言い聞かせ、何かが去るのをじっと待った。
翌朝、鏡を見ると眼球にはいくつもの小さな手痕。耳の奥にはその何かの足音がこびりついていた。