湖畔の熱血教師その2

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熱血教師の唯一の楽しみは、夏に湖畔のホテルに泊まることだ。
Оヘンリーの名作に『桃源郷の短期滞在客』がある。
ある高級ホテルに気さくな貴婦人が現れ、そこで身なりの立派な紳士に恋をします。数日の逢瀬を楽しんだ後、貴婦人は紳士に「実は私は単なる百貨店の売り子です」と告白するというものだ。
ある意味では、その貴婦人に似ているな、と熱血教師は思った。ここにいれば、だれからも教師とは思われない。湖畔を眺め、本を読んでいれば、ただのひとだ。国家がどうのとか、志しがどうのとか、熱く迫られることもない。
熱血教師にも休息が必要なのだ。
そう思っていると、身なりの整った若者が近づいてきた。腰には刀を差している。熱血教師はため息をついた。若者は熱血教師に掴みかかる。
「吉田松陰先生、こんなところで何をしているのですか。門下では弟子がお待ちしているのですぞ!」
その他
公開:23/09/01 16:24

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