夜の音

毎年家族と行く夏祭り。いつもは浴衣を着るんだけど今年の私は部活が忙しくてそんな余裕がなかった。
その日だって部活帰りに神社で家族と合流する約束をしていた。
神社に到着し、家族はどこだろうと辺りを見回す。
…いた。浴衣姿の弟が一人、最近お気に入りだと言うアカレンジャーのお面をつけて鳥居の前に立っていた。
両親は幼い弟を一人にするなんて何を考えているんだか…
弟は私の手を引くと盆踊りに参加したいと言い出した。
浴衣姿じゃないけどまあいいか。
「浴衣姿で踊るお姉ちゃん、見たかったなぁ…」
ぽつりと呟く弟。可愛い事を言ってくれる。

盆踊りを終えると弟が突然私の手を離し、走り出した。どうしたんだろう？
「やっと見つけた」
弟を連れた両親が私の肩を叩く。
じゃあ、さっきまで一緒にいたあの子は一体…？
私は来年、浴衣を着て夏祭りに来ようと決めた。そうすればまた、あの子と盆踊りで再会できる気がするから。