夜の音

数千年の時を生き、賢者と呼ばれるドラゴンに吟遊詩人が歌を教えた。
ドラゴンの長く、つまらない話を歌に変えた。
ドラゴンは吟遊詩人から琴も学ぼうとしたがドラゴンの大きな体に見合う琴は作れなかった。
また、ドラゴンは手先が不器用で、琴があっても爪弾く事は出来ないと吟遊詩人に愚痴を漏らした。
吟遊詩人はドラゴンに寄り添った。ドラゴンの話に合う曲を弾き、話を歌にするコツを教えた。
ドラゴンの歌を聞きに多くの人が集まる。
歌にされた伝説や英雄譚の数々は人々の心を掴んだ。人々もその歌を口遊んでは未来へと物語を伝えた。
だがドラゴンはいなくなった。死んでしまった吟遊詩人の後を追い、空へと羽ばたいた。
見てごらん。あの輝く星を。あれはそのドラゴンの逆鱗だと言われている。
触れてはいけないよ。今もあの場所でドラゴンと吟遊詩人は歌い続けているのだから。
ほら、耳を澄ませてごらん。星から琴の音が聞こえてくるよ。