全てを忘れる君へ

難病の彼女を救う薬が完成した。だがそれには大きな副作用がある。
彼女が、恋人である俺を忘れてしまう事だ。
それがどうした。それならまた一から愛を育めばいい。俺は何度でも彼女を愛してみせる！
彼女が俺を忘れた１度目。覚悟していたが辛かった。でも、また最初から彼女と付き合うと決めた。
彼女が俺を忘れた２度目。恋人になれたのにまた最初からか…
彼女が俺を忘れた３度目。酷く毛嫌いされる。そんな！俺はこんなにも君を愛しているのに！
彼女が俺を忘れた４度目。良かった。彼女は俺をまた愛してくれた。
彼女が俺を忘れた８度目。１０度目。１００度目。…今何度目？
限界だ…俺は彼女に別れを告げた。お互い全てを忘れ、別々の道を歩んでいこう…

彼の難病は私の事を忘れる事で完治する。
私の存在が彼の病気の元凶であると知った時、私は絶望した。でもそれを受け入れた。
私は彼の背中にさよならを告げる。
どうか、お元気で。