夜の音

植物研究科学者の私は植物の声を聞く装置を完成させた。
ヘッドホンを耳につけ、声を聞きたい植物にマイクを近付ける。
植物は人間も動物も昆虫も同じものと認識しているようだ。
だから私の問いかけを植物は無視する。どうやら私の声を鳴き声と認識しているようだ。
植物の声を聞く機械もその言葉が分からなければどうしようもない。
だが、機械を作った事に意味はあった。
植物の多くは夜に歌らしきものを歌っていた。
その歌がとても面白くてね、人の耳はそれを認識できないものの、人の脳はしっかりその音を捉えているんだ。
しかも植物の歌を聞くと人は睡眠を誘発させられる。
歌に慣れた人間、もしくは歌の効かない人間は等しく眠りが浅い。
人の睡眠と植物は深く結びついていたってわけだ。
また、植物は成長するにつれ歌が上手くなっていく。新芽の歌はまだ拙い。
植物が子々孫々と伝える歌を耳に、私は睡眠より先にあくびを一つ誘われた。