着ぐるみ

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 目の前を、はしゃいだ子ども達が走り回っている。そして、その内の何人かが、時折、ボクの前で立ち止まり、ボクをじっと見る。ボクが手を上げると、笑顔で手を振り、また、走っていく。
 今日は、毎週末にデパートの屋上で行われる子ども向けショーの日だ。MCを担当する若い女性がいて、ぬいぐるみのようなキャラクタのボクがいる。ボクは、このキャラクタの担当になり、もう、ベテランの域と言っていい。
 おそらく、本当のボクを知ったら、大人はもちろん、子ども達だって、今のようには近寄ってこないだろう。しかし、ボクには、本当の自分を覆うこの外側がある。これをまとっている以上、ボクの本性がバレるコトはない。だから、子ども達も安心し切っている。
 よく考えれば、簡単な話だ。
 どんなコトを考えていても、どんな本性でも、この外側で隠されている。中身は見えない。
 さぁ、そろそろ本番だ。
 いつもの着ぐるみを着なくては。
SF
公開:23/08/30 05:55

shimany( 京都 )

ライブラリアン/アーティスト/クリエータ

わが子達に刺激されて始めます。
もう少し長いショートショートは、こちらです。

https://note.com/shimany/m/m5c907af8f7c5

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